冷やし中華は終わらない
始まりはあっても終わりのない冷やし中華
「冷やし中華はじめました」
古来より連綿と続けられている夏の訪れとともに行われる儀式。日差しが暖かくなり、汗ばむ頻度も徐々に多くなってきた。冷やし中華の始まりが告げられる日もそう遠くはないだろう。
しかし、不思議なことに冷やし中華は始まりの宣言を聞くことがあっても、決して終わりが伝えられることはない。この世界に存在するものすべてに始まりと終わりはあり、宇宙とてその例外ではない。冷やし中華とは宇宙の物理法則から解き放たれた存在なのだろうか?
冷やし中華が見る未来
冷やし中華は味だけでなく造形においても非常に完成された存在だ。艶やかな黄色い麺の上に配置されるキュウリやハム、錦糸卵、トマトなど色鮮やかな食材。これほどまでに色彩豊かな料理は他に類をみない。
終わりを知らずに、只ひたすらに始まりを繰り返す冷やし中華。人類や宇宙の存在が潰えたその先を知ることができる唯一の存在だ。