この町には何が足りないのだろう
何処にでも在りそうで此処にしかない町。どこにでもいそうな町人Aや町人Bや町人Cもなんだか似通っているし置き換え可能でしょ?って思えちゃうけど、実際そんなことは適わない。似ているようで矢張り何処かが違う。
私は唯一無二の町に住まう唯一無二の人間なのだ!と声を大にして言ってしまうのは社会通念上よろしくないので、心の中でそっと思う。思いを噛みしめて味わうだけに留めておこう。
そんな町にも何かが足りないようで
ドコにでも在りそうな町なので、とりあえずのところは一通りのものは揃っている。生活するのにも不自由はしないだろうし、土産に持たせる名物や名産だってある。景勝地だってあるし古代遺跡だってあるし天に届こうかというバベルの塔だってある。
なんだってあるけど何かが足りない。人々は口々に「この町には何もないからねえ」って言いがちである。私自身も内外の人に向かって「この町には何もないからねえ」って言いがちである。本当は過不足なくあるんだけど、何もないことで落ち着いている。本当はあるんだろうけど。
これがチルチルミチルって奴かな?
幸せの青い鳥は存外近くにあったというアレ。本当は近くにあったけど遠くに赴いて色々探さなくちゃ青い鳥は見つからなかった。何事にもフラグを立てなくちゃいけない。足るを知るには不足を知ってもがくことも必要なのだから。
町に対するモヤモヤの雲間の向こう側には晴れ渡った蒼穹が続いていることを期待して今日も明日もコノ町に住まうとしよう。